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《誹謗・中傷、暴露系ネタ、アラシ厳禁》
“繋げない”コミュニケーション

2012-09-18 Tue 00:00
 前回の記事にて、鳥取の霊峰・大山登山の思い出について書きました。

 このイベントが私にとって大変思い出深いものとなった理由。それは大山そのものの魅力はもちろん、登山口で偶然出会ったオイチャンの存在も同じくらい大きいです。

 この日、私が夏山登山口で立ち止まると、先に着いていた71歳の男性…便宜上“オイチャン”と呼ぶことにします(特に意味なし・笑)。

ここが登山口ですよ。頂上までは迷うことのない一本道です。帰りは14時50分発のバスがありますので、それに乗るといいですよ。ゆっくり歩いても十分間に合いますから

そう親切に教えてくれました。私もバスの時刻表は記憶していましたが、ここは素直にお礼を述べます。

 何となくそのままオイチャンと一緒に歩く流れになった私は、これも旅の醍醐味とばかりに積極的にオイチャンに話しかけました。

 オイチャンは月2回ペースで大山に登っているそうです。学生時代には東京にも住んでいたようですが、基本的にずっと鳥取県民らしい。私も東京から登山のために来たことを明かします。さすがはベテランハイカーのオイチャン、歩きながら大山の情報を色々と教えてくれました。とても親切で気さくな地元のお父さんといった印象でしたね。

 そのうちオイチャンは気を遣って

私は歳なので頂上まで3時間かかってしまいます。あなたなら(若いので)2時間半くらいで登っちゃうでしょうから、どうぞ先に行って下さい

と申し出てくれました。

い、いやぁ…オレもエンジンかかるまでは相当ノロいんですけど…

でも初対面の方にカミングアウトするのも恥ずかしいので、

そ、そうですか?ではお先に…

そう言って歩を速めました。

 しかし…案の定いつものパターンで、最初のうちはちょっと歩いては休憩の繰り返し。一合目付近で呆気なくオイチャンに追い抜かれてしまいました。追い抜きざまに私のプライドを傷つけぬよう(?)

今日は暑いですからね(ペース狂っちゃいますよね)

とわざわざ声をかけ、消えていくオイチャン。

 ここから頂上までの様子は前回の記事で綴った通り。長い行程に苦しみながらも、

あまり遅くなって、下山するオイチャンと擦れ違うことになったら恥ずかしいなぁ

ということは何度かチラチラと頭に浮かびました(笑)

 山頂直下の避難小屋に辿り着いた私は、山バッジを期待して中に入りましたが願い叶わず。代わりにお弁当を食べ終わったばかりのオイチャンと再会。照れ隠しで

いやぁ、バテちゃいました

と白状する私に対し、オイチャンはまたも私のプライドを傷つけぬよう(?)

頻繁に写真撮影されていたから(遅かったん)でしょ?

と労ってくれます。ここでも彼は

12時頃下り始めれば14時50分のバスには十分間に合いますから

と教えてくれました。

じゃあ、私はこの上(頂上)まで行って来ますね

そう伝え、更に2、3分歩いて山頂へ。ガスで真っ白な頂上で木道に座りおにぎりを食べていると、またオイチャンがわざわざ私の下へ。

じゃあ、私はこれから下山しますので…あ、次のバスは14時50分ですから

もう完璧に記憶できましたって(笑) いやぁホント、オイチャンの親切心には疲労も癒されます。

 その後私も早めに下山を開始。すると九合目を越えた辺りでオイチャンに追いついてしまいました。どうやらオイチャン、上りは結構速いのですが、下りはかなり遅いようです。逆に私は速く歩けましたが、“袖擦り合うのも多少の縁”。オイチャンに付き合うことにしました。

 バス停までの2時間40分はオイチャンと世間話を交わすには十分。大山のこと、草花のこと、鳥取の魅力など楽しい話がたくさん聞けました。ただオイチャン、名前や住んでいる場所は決して明かそうとしないんですよね。私は聞かれたら答えよう…というか名刺を持っていたので渡しても構わないと考えましたが、お互い自分自身のことは会話の流れの中で必要な最低限の情報を明かすのみ。まぁ、個人情報を交換したところで「今度飲みに行こう」というのも非現実的。お互い大山を愛していれば今後もまた再会出来るかも知れない…こういう繋がりも素敵ですよね?

大山寺の方から降りてみませんか?案内しますよ。こちらの方が景色がいいんですよ

いいですね!そうしましょう

私も元々そのつもりでしたが、素直にオイチャンの提案に乗りました。川原からオイチャンと眺める大山の北壁は男性的で猛々しく、恐らくこれぞ大山!な風景なのでしょう。

関東にはない風景ですよ

そう答えた私に、満足げに微笑むオイチャンが印象的でした。

 その後大神山神社奥宮まで辿り着き、長い石畳を歩きます。ここでもオイチャンからは大山寺の歴史など興味深い話がたくさん聞けました。

 大山寺を抜け出て、そろそろ土産物店が立ち並ぶ道に出ようかという時。一軒の味のある佇まいの茶屋が見えました。

ここのソフトクリームが美味しいんですよ。ビールもあります

へぇ、いいですね。じゃあ両方堪能していこうかな(笑)

でしたら私も付き合いますよ

…じゃあ、ここは私にご馳走させてくれませんか?今日はお世話になったし、本当に楽しかったので…

とんでもない!割り勘にしましょう

でもそれでは…

私はずっと、そういうこと(接待?)がタブーな仕事をしていたので、割り勘で飲みましょう

…役人?まぁあまり突っ込んだことを尋ねるのも失礼かと思い、オイチャンの提案通り割り勘で飲むことにしました。

 茶屋は囲炉裏付きの座敷席もある、いい感じの店。メニューには美味しそうな蕎麦や、大山おこわもありますが、今回はお預け(笑) 代わりに私とオイチャンと、そして茶屋の女将(?)であーだこーだ楽しく会話しながら、ジョッキ片手にバスの時間まで束の間の楽しいひとときを過ごしました。こんなに美味い生ビール、久々でしたね。

 ここで突然オイチャン、

今日の記念にひとつ、プレゼントをあげましょう

そう言ってリュックからクリアファイルを取り出し、そこに挟んだ一枚の紙を差し出してきました。

photo

大山の登山案内のようです。登山道のポイントが上手にA4一枚にまとまっています。しかも下山ルートはたった今、二人で歩いてきたコース。これを見ればいつでもこの日のことを鮮明に思い出せることでしょう。粋ですねぇ。オイチャンがパソコンで自作したのかと思いましたが、なんと登山道に落ちていたものを拾って帰り、コンビニでカラーコピーしたのだそうです(笑)

今回のように大山で親しくなった方がいると、その都度差し上げているんですよ

…素性は分かりませんが、年金生活者にとってコンビニのカラーコピー代、1枚数百円は決して安くないでしょうに…私はありがたくこれを頂きました。リュックに入れておいたのに汗で一部破れてしまったのは内緒です(笑)

 でも私、これでようやくオイチャンのことが理解出来たような気がしました。

 私は彼とたまたま登山道で出会ったわけではなかったんですね。オイチャンは月に2回も大山に登る、大山を愛する地元民。きっと私のような大山初心者には一人でも多く、大山ファンになって欲しいと願っているのでしょう。今回、そのターゲットに選ばれた(笑)のがたまたま私だった。そして実際に少し話してみて、彼のお眼鏡に叶ったのでしょう。光栄です。恐らくこれがオイチャンなりの大山の楽しみ方なのかも知れません。

 その後も一緒に山バッジを探したり、ソフトクリームを食べながら歩いたり、「山登りのことは全部日記に書いてるんです」と、このブログを紹介したり(笑)しながらバスを待ちました。

 結果的に私たちは米子駅に戻るまで、お互い素性を(はっきり)明かすことなく別れました。記念撮影もしていません。確かにSNSのような便利なツールがあればオイチャンとも簡単に繋がれるし、今後もお互いの日常を除き見ながら、たまにコメントを交わすことも出来たでしょう(彼がSNSを使っていれば、ですが)。

 でも今回に関しては、それが必要だったとはどうしても思えないんですよね。なぜならこの日のことは紛れもなく、私の人生の中でトップクラスの素晴らしい思い出として心の中に残っているのですから

 そりゃ、またいつかオイチャンと会いたい、一緒に大山に登りたいという気持ちもあります。でもSNSで繋がった瞬間、連絡先を聞いた瞬間にこの大切な思い出は枯れてしまうような気がする。星の数ほどの思い出のひとつに成り下がってしまうのではないか?だからこれで良かったんだ…そんな風に思えました。

 これは個人の価値観の違いでしょうね。せっかく知り合ったのだからオイチャンのことも人脈リストに加えるべき、という考え方も否定はしません。そういう人がたくさんいるからFACEBOOKが賑わうのでしょうし。でも私には、連絡を取り合えることが必ずしもベストな関係だとはどうしても思えませんでした。

私は初めての鳥取旅行、初めての大山登山を通して最高の思い出を作ることが出来た
オイチャンは自分が愛する大山のファンを今日もまた一人増やすことが出来て満足

きっとこれが全てなんです。時に“繋げない関係”もアリでいいじゃないですか。「友達」に伝えなくても自分の心の中に大切にしまっておけばいいじゃないですか。これが本当の思い出なのですから。縁があればきっとまた会えますよ。

 そしてこういった出会いや経験を増やすことが、私にとって価値のあることなんだろうな…そう思いながら、もうちょっとだけ余韻に浸ることにします…。





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