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写楽 閉じた国の幻(ネタバレなし)

2013-10-03 Thu 00:00
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 小4の時に通っていた進学塾の国語教師から教わり、今でも覚えていることがあります。

「『小説』とは作者が人物や出来事を通して行う、読者への訴えかけである」

今回読んだ本格ミステリー作家・島田荘司著「写楽 閉じた国の幻(上)」「同(下)」(ともに新潮文庫)は、現在世の中で支持されているある説を著者が否定し、「オレはきっとこうだと思う」と読者へ訴える…まさにそんな作品でした。

 もそも島田荘司は私が最も好きな作家なのですが、最近は「リベルタス」しかり「カシュガル」しかり「ゴーグル男」しかり、(あくまでも個人的に)どうも今ひとつ面白くない。どれもテーマありきになってしまい物語そのものが貧弱。小説としては「つまらない」と評価せざるを得ませんでした。

 しかしこの「写楽」は違う。テーマ、発想、文章力、取材力、どれを取っても超一級品。まさに「シマソーここにあり!!」的傑作ゆえ、これまで浮世絵にも写楽にも全く興味のなかった私が、今や完全ににわか浮世絵&写楽ファンになってしまったほど。来春大江戸博物館で始まる「大浮世絵展」が今から楽しみ、という状態です(笑)


 さて、物語は葛飾北斎研究家である主人公・佐藤が、江戸時代に描かれたある肉筆画を手に入れるところから始まる。この絵が彼の目には写楽の肉筆画のように思われ、興奮する。

 写楽とは寛政6年(1794年)の江戸に突如現れ、同年5月から翌3月にかけての約10ヶ月間に約145点もの錦絵作品を出版したのち、忽然と浮世絵の世界から姿を消した、正体不明の天才浮世絵師。彼の素性は長年謎とされてきた。

 記録も史料もほとんど残っておらず、誰も伝承してこなかった写楽の正体を、この肉筆画を手掛かりに割り出すことが出来るかも知れない…そんな期待を持ち始めた佐藤だが、彼は外出先の六本木のビルの回転扉により、ひとり息子を事故死させてしまう。

 悲しみのどん底に突き落とされ、生きる気力を失い、自殺も試みた佐藤だったが、事故調査チームメンバーのひとり、美人ハーフ工学博士(笑)片桐教授と出会ったことで元気を取り戻す。そして彼女に支えられながら事故の裁判のために(読めば分かります・笑)雑誌発表用の論文を執筆することを決意。写楽の真の正体に迫るが…というお話。

 私は当初、江戸時代にも浮世絵にも全く興味がありませんでした。しかも昔から歴史小説が大の苦手でして(笑) 面白そうだけど、最後まで飽きずに楽しく読めるかな?と心配しましたが、全く問題ありませんでした。

 本書は「現代編」と「江戸編」を交互に読む構成なのですが、比重は現代:江戸が8:2くらいなので、ほとんど現代が舞台の小説を読む感覚。しかも江戸編もさほど難しい言葉や固有名詞はなく、かなり読みやすいので助かりました。

 また、浮世絵初心者でも物語に没頭出来るよう、写楽がいた江戸時代の町や生活の様子、浮世絵のこと、社会情勢、とにかく詳しく分かりやすく描写されています。写楽の謎に関する描写(説明)についても途中何度かおさらい的に繰り返されるので、とても分かりやすいし、読み進めるうちに自分も写楽をちょっとだけなら語れるようになっている(笑) そんな喜びもこの小説には備わっていると思います。

 また、読んでいて感じる主人公・佐藤という中年男の女々しさ。とにかく情けない男なんですよ。う~ん、でもどこかで似たような男と出会ったことがあるような…って、やっぱり石岡クンだ(笑) そう、佐藤は島田荘司作品の、いわゆる「御手洗潔もの」で彼の助手的立場の作家・石岡和己を彷彿とさせる存在なのでした。最近御手洗ものはあまり読めないので、ファンとしてはそんな配慮(?)も嬉しいもの。そう考えるとヒロインの片桐教授…頭が良くてオランダと日本とのハーフで美しく、主人公のような女々しい男になぜか好意を持ってくれるという(笑) そして主人公を助けるために颯爽と現れる…何だか彼女もちょっとだけ御手洗のように思えてきます。

 そして何といっても本書最大の盛り上がりは、やはり島田荘司の発想の凄さですね。現在写楽の正体は、当時八丁堀に住んでいた阿波出身の能役者・斉藤十郎兵衛説が有力なのだそうです。しかしそれでは解決しない謎や矛盾が多い。佐藤…いや、島田荘司が本書の中で提唱する写楽の正体は、そんな斉藤十郎兵衛説を完全否定し、「これなら全ての謎や矛盾の説明がつくだろうが~!!」という世間への訴え、主張のようでした。

 まぁ、私は江戸時代にも浮世絵にも詳しくないただの素人ですから、これを100%信じて良いのかどうかは分かりません。そもそも本書は史実を題材にしたフィクション小説ですし。あくまでもひとつの説として楽しむくらいでちょうど良いのかも知れません。


 そういえば著者はかつて「切り裂きジャック百年の孤独」という作品において、「切り裂きジャックの正体は若い娼婦」という仮説のもと、スッキリ爽快な傑作を書きました。本書もあれに似た爽快感が得られると思います。


 いやぁ、それにしても面白かったです。正直言って、島田荘司はもうオワコンだ、と自分の中で切り捨てるところでしたが(上から目線的かつミステリー界の大御所に対し失礼な!!・笑)まだまだシマソーの天下は終わりそうにありませんね。


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