現在の閲覧者数:
無料カウンター
《誹謗・中傷、暴露系ネタ、アラシ厳禁》
彼女は存在しない(ややネタバレあり)

2013-12-09 Mon 23:00
photo


 先日ご紹介した「こわれもの」の浦賀和宏著「彼女は存在しない」(幻冬舎文庫)を読了しました。

 「こわれもの」は何となく予想出来てしまうストーリー展開と、ちょっとモヤッとするラストのどんでん返しが不満でしたが、全体的に読みやすかったので本書も読んでみようと思いました(ブックオフで105円だったし・笑)。

 物語は、平凡ながら幸せな生活を謳歌していた香奈子の日常が、ある日突然恋人・貴治が何者かに殺されたのを契機に狂い始める。同じ頃、妹の度重なる異常行動を目撃し、多重人格の疑いを強めていた根本。次々と発生する凄惨な事件が香奈子と根本を結びつけていく…というもの。

 読み終えてまず感じたことですが、「こわれもの」でもそうでしたが、本文中に登場人物が聴くテクノ音楽のバンド名やアルバム・曲名、およびそれらの解説がやたらと出てくるんですよね。しかもストーリーとは全く無関係。間違いなく著者の趣味かと思いますが、これだけのことでも私は気分が萎えてしまいました。だって小説の醍醐味って、読み進めるうちに登場人物(主に主人公)に自己投影して、気持ちをシンクロさせて物語の世界にドップリ浸かることでしょう?なのにその対象が夢中になって(少なくとも多くの読者にとっては)わけの分からないニッチな音楽ばかり自慢げに楽しんでいては、その都度現実の世界に引き返らざるを得ません

 例えば私が好きな島田荘司の小説にも、登場人物が音楽を聴いたり、その魅力を解説したりするシーンは頻繁に登場します。しかし島田先生の場合は特定のジャンルやアーティストに限りません。クラシック、ジャズ、ブラック、ロック、ポップ…ある程度彼の嗜好的要素も含んではいるのでしょうが、ストーリー展開上必然性を感じられるし、登場人物を通じてその音楽の魅力が伝わってくるんですよ。読み終えた後、影響を受けて実際にCDを買いに行ったことが何度もあります。

 一方、浦賀氏のテクノは完全に自己満足。必然性が全く感じられない。だからまず、著者は今後この手の無意味な描写は止めた方がよいですね。これではまるである程度売れても小さなライブハウスから出ようとしないインディーズバンドです。

 そしてラストのどんでん返し。アマゾンのレビューを読むとほとんどの読者が「最初から予想出来た」と低く評価しています。私は全く予想出来なかったのですが(笑)

 まぁ、そのどんでん返しの善し悪しはともかく、私は「あっ!」と驚かされながらも冒頭までページを戻して確認したり、辻褄が合っていたか?改めて反芻したりする気になれませんでした。というか面倒臭いしどうでもいいや、という感じです。先ほども述べたように、やはり物語に深く没頭出来ていなかったのでしょうね。

 例えば同じ大どんでん返しで読者の予想を裏切るというと、湊かなえの作品の多くもそんな感じです。しかし彼女の作品はよく出来ていますから、ラストで明かされる真実に触れた瞬間、ページをバーッとめくって前の方に張られた伏線を確認せずにはいられない衝動に駆られる。この違いはそのまま作品レベルの違いかと思います。


 ひとつだけ評価するなら、本作は仕掛けの性質上、テレビや映画など映像化は絶対に無理だということ。つまり書籍のメリットを活かして書かれた、書籍でなければ楽しめない作品であるということです。活字を読むのが面倒だからと何でもかんでも映像化を望む人が少なくない中、このような読者優遇的コンテンツには好感が持てます。

 先の湊かなえも書籍ならではのメリットを活かして、文章の構成を工夫することで魅せる作家と言えますが、彼女には遠く及びませんけれどね。


 う~ん…読みやすいのですが、読み終えた後の満足感が少ないんですよね。大盛りの焼き魚定食を完食したのに、帰りにコンビニでお菓子を買って帰りたくなる感覚に似ているんだよなぁ…。


----------------------
【TODAY'S PIC UP ITEM】

彼女は存在しない (幻冬舎文庫)彼女は存在しない (幻冬舎文庫)
(2012/11/30)
浦賀和宏

商品詳細を見る



スポンサーサイト
別窓 | 読書 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑

<<孤虫症(ネタバレあり) | 瑠璃色幻想曲 | ほんとにあった!呪いのビデオ55(ネタバレあり)>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL


FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
| 瑠璃色幻想曲 |