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もう少しだけ受け入れて欲しかった「美味しんぼ」の問題提起

2014-05-21 Wed 00:00
 先日、「美味しんぼ」における表現が“風評被害を誘発する”として問題視されている件について触れました。

 その後も事態は収拾することなく、安倍首相がこの問題についてコメントしたり、「美味しんぼ」そのものが一時連載休止(最初からその予定という説あり)になったりと、まだ暫く尾を引きそうですね。

 私はこの「美味しんぼ」、過去に第1巻から70巻以上読みました。残念ながらこの10年ほどは読んでいないので、社会派路線(?)に走ってからはほとんど知らないのですが…。

 それでも改めて記憶の中の幾つかのエピソードを思い出すと、そもそも「美味しんぼ」って当時から作者が問題視するテーマについて、作者の主観的見解や感情的主張を、山岡や栗田ら登場人物を通してちょっと大袈裟かつ一方的に訴える漫画なんですよね。そのターゲットになるのはたいてい食の安全性を無視して金儲けや合理的経営に走る企業や、それに踊らされる、己の無知にすら気づかない消費者でした。

 ちょっと古いですが、例えば「ドライビール戦争」。1980年代末に一世を風靡した新感覚のビールをテーマとしたエピソードがありました。作者は本来のビールの材料以外の“混ぜモノ”を使うこの“ビールもどき”と、それを売ろうとメディアを大々的に利用して消費者を煽る各ビール会社、そして味の違いも分からず(?)流行やイメージに流される消費者たちがお気に召さなかったようです。漫画の中で山岡らが方々に取材して回り、最終的に「ドライビールは本物のビールではないし、“企業秘密”を盾に材料情報を隠蔽する各ビール会社の姿勢も許せない。こんなものを有り難がって飲んでいるようじゃ日本の酒飲みも終わりだ!」という結論を出しました。もちろん富井副部長はじめ、当初ドライビール派だった山岡の周囲の人々も完全に説得されてしまったことは言うまでもありません。

 しかし実際には、ドライビール…いえ、“本物のビールではないビールもどき”(笑)は絶滅するどころか「飲みやすくて好きだ」という消費者に長年支持され続け、今や日本を代表するビールブランドです。当時の作者の言い分は今でも正論だと思いますが、同時に単なる作者自身のこだわり、感情的主張でもあったわけです。

 では、漫画でこのように感情的主張を訴えるのが悪いか?というと、私は基本的にそれこそが創作コンテンツ、普通にアリだと思うんですよね。映画、小説、流行歌、個人ブログ、全てそういうものですよ。

 当時の私はこれを読んで初めて一番絞りとスーパードライの違いを学びました。でも所詮漫画ですから教科書の情報のように信じることはありません。あくまでも考えるキッカケです。現に山岡が「美味い」と言い切ったものを真似して作ってみたら大したことなかったこともありましたからね(笑)

 しかしこれを機に自分が食べるものや飲むものを巷のブームやテレビCMに頼って選ぶことをやめ、食に限らず出来る限り物事の本質を見極めようと努めました。これが私にとっての「美味しんぼ」の楽しみ方でした。

 そういう意味では「美味しんぼ」と出会えた私はラッキーでしたし、結果的に視野も広がったのかも知れません。確実に言えるのは「美味しんぼ」はこれまで賛否にかかわらず、我々に多くの問題提起をし続けてくれたということ。その上でこれらを信じるか信じないか、受け入れるか受け入れないかは読者次第なのだと思います。

 ただ、この「ドライビール戦争」では登場する企業名を“ピンキリ”“ユウヒ”“カネトリー”“ポロポロ”などとぼかしていました。実名の固有名詞がバンバン登場する今回の福島のエピソードとは性質が異なるので単純に「何を今さら騒ぐんだ!」とは言えません。でも私たちが報道でこの事実を知り、作者からの“問題提起”を受けとめ、改めて考えてみようとする前に早々と(メディアでは)ほぼ100%、誰もが「美味しんぼ」を叩いていたこと、そういう空気が出来上がっていたことをとても残念に思います。


 ところで今回の騒動を見て純粋に疑問に思ったのですが、真剣に批判する人は過去にきちんと「美味しんぼ」を読んだのでしょうか?そしてその作風、いやそれ以前に漫画という娯楽の本質をどこまで理解した上で批判しているのでしょう?

 昔、こんなことがありました。当時大人気だった漫画「デスノート」のキャラを使ったキャンペーンを打ちたい、という得意先から相談を受けた時のことです。

 当時の私の上司は「デスノート」をほとんど知りませんでした。しかしプライドが高いので「知りません」「勉強するので少し時間を下さい」とは言えない。結局その場で「いや~でもアレ、人を殺す漫画っすよねぇ~?いくら漫画でも人を殺すってのはどうなんすかねぇ~。あまりイメージよくないんじゃないっすかねぇ~?」などとはぐらかし完全に引き腰でした。

 私は心の中で(じゃあなぜ「北斗の拳」も「キン肉マン」も「ドラゴンボール」も「GANTZ」もあれだけヒットしてるんだよ?!主人公全員殺人者じゃないか!!)と突っ込みながらも、翌日上司に「デスノート」の単行本を全巻貸して読ませました。すると案の定、「めちゃくちゃ面白いよ~!!」ですからね。それどころか私に断りもなく別の管理職社員に又貸しして“布教活動”に励んでいましたっけ。当然“人を殺す”以上の魅力や作者の主張を理解したから「面白い」と感じるに至ったのでしょう。

 まぁ、こういうのはよくある話です。もちろんだからといって今回の「美味しんぼ」問題を肯定するつもりはないし、「批判する奴は読んだことがない奴に違いない」と言い切るつもりもありません。

 ただ私から見るとどうしても、今回批判している人たちの中には少なからず、ドライビールの時のようにブームに乗っかって騒ぎたいだけの人、私の元上司のような人もたくさんいるような…そう思えてなりません。

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