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物語のおわり(ややネタバレあり)

2014-10-20 Mon 00:00
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 湊かなえ最新作「物語のおわり」(朝日新聞出版)を読了しました。

 湊かなえものとしては、ストーリーそのものの面白さという点では正直言って“中の上”でしょうか?それよりも相変わらずですが“書籍の限界に挑戦するかのような凝った構成”がよかったですね。何だかストーリーを構成でカバーする作家さんのように聞こえてしまいそうですが…。

 まず第1章で「空の彼方」というタイトルの、よく分からない物語を読むことになります。

 『山間にある小さな田舎町のパン屋の娘・絵美は、毎日山の向こう側の世界を想像していた。
 ある日、転校生の道代から勧められて書いた小説が面白いと絶賛される。
 やがて絵美はパン屋の客だったハムさんと交際するようになり、後に彼と結婚して実家のパン屋を継ぐことを決める。
 しかし人気作家・松本流星の弟子になったという道代から、松本流星が絵美の小説を気に入り、弟子にならないか?と言っていると伝えられ、絵美の小説家になりたいという夢が甦る。これに猛反対したハムさんを捨て、絵美は東京へ行こうと駅に向かうが、駅にはハムさんが待ち構えていた…』


 結末がハッキリしない短編小説。最初は何だこりゃ?という感じですが、第2章からは様子がガラッと変化。

 北海道を旅行する妊婦・智子。彼女は癌を宣告されたが治療よりも出産を優先し、生まれてくる娘のために母娘の思い出を必死に残そうとしていた。

 智子はフェリーのデッキで知り合った萌という中学生から、「空の彼方」という著者不明の小説のプリントアウトを受け取る。登場人物に自分を重ねて読み進め、自分なりの“結末”を想像した智子は、自分が抱える悩みを解決するためのヒントを得られたような気がして、生きる希望が湧いてくる…。

 その後「空の彼方」は、

第3章では、プロカメラマンを諦め、実家の蒲鉾工場を継ぐことになった拓真。
第4章では、志望するテレビ番組製作会社から内定をもらったものの、同じ文芸部で小説家志望の恋人から生き方を否定される大学生の綾子。
第5章では、特殊造形を勉強するためにアメリカに行きたいという一人娘に賛成できない木水。
第6章では、これまで仕事一筋に生き、かつて脚本家を夢見た恋人を見捨ててしまったことを引きずる、ハイミスのあかね。

…と、まるでリレーのバトンのごとく北の地で人から人へと渡ってゆく。何かしらの悩みを抱え、モヤモヤしていた彼らは「空の彼方」を読み、それぞれ自分なりの解釈で結末を想像することで、前向きに生きるためのヒントを見つける…という心温まる系のイイお話。

 そしてラストに向かうにしたがい、誰が、何のために「空の彼方」を執筆したのか?物語に書かれた人物や出来事は実在するのか?などが明らかになり…という感じです。

 読み終えてからあれこれ思い出すと、本一冊を通してあらゆる伏線…最初は普通に読み飛ばしてしまうようなキーワードの数々が上手に埋め込まれていることに気づきます。ジワジワきます。

 軽くですがネット社会や子供の虐め問題などを強烈に皮肉る部分もあり、“伏線+皮肉”という「告白」以来変わらない、著者らしい作品だったと思います。

 そして改めて「価値観は人それぞれ違う」ということもあらゆる人物を通して伝わってきますね。

 何となくドラマにしやすい物語だなぁ、と感じました。


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妊娠三ヶ月で癌が発覚した女性、 父親の死を機にプロカメラマンになる夢をあきらめようとする男性…… 様々な人生の岐路に立たされた人々が北海道へひとり旅をするなかで 受けとるのはひとつの紙の束。 それは、「空の彼方」という結末の書かれていない物語だった。 山間の田舎町にあるパン屋の娘、絵美は、 学生時代から小説を書くのが好きで周りからも実力を認められていた。 ある時、客としてきてい... …
2015-12-22 Tue 14:39 粋な提案
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