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世界でいちばん長い写真(ややネタバレあり)

2015-04-08 Wed 22:51
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♪Hold me tight darling 
8月の風を~抱きしめて~
Fly with me darling 
飛び立つの二人のサヴァンナへ~♪


 一定以上の年齢の人なら “あの曲”の冒頭部分が脳内再生されるに違いない…そんなタイトルに思わず目を奪われる、誉田哲也の「世界でいちばん長い写真」(光文社)を読了しました。最近は東野圭吾ばかり読んでいたので、久々の誉田哲也は新鮮です。

 誉田哲也の小説は、少々乱暴ですが大別すると「ストロベリーナイト」のような警察小説と、「疾走ガール」のような青春小説にカテゴライズされると思います。この「世界でいちばん長い写真」は後者。「スリット写真」という特殊な写真に魅せられた高校生の青春ストーリーです。物語的に特に大きな見せ場も大ドンデン返しもありませんが、読み終えると人生の、とりわけ青春時代に手に入れた大切な宝物の存在を思い出す…そんな心地よいお話でした。

 物語は冴えない中学三年生の内藤宏伸が主人公。親友でクラスの人気者だった洋輔が転校してからというもの、彼は冴えない日々を送る。特にやりたいこともない、受験勉強にも身が入らない。所属している写真部の活動にも身が入らず部長の三好奈々恵に怒られてばかり。

 そんなある日、宏伸は祖父のリサイクルショップで見たこともないゴツいカメラと出会う。「世界一長い写真」が撮れるカメラを手にしたことで宏伸の日常はきらめき、ワクワクする毎日を手に入れる。そしてこのカメラを使って、全校生徒を巻き込んだ卒業記念の撮影会が宏伸中心に行われる…。


 私は最初、ここに登場する“長い写真”って、単なるパノラマ写真のことだと思っていました。しかし実際には、ある古いアナログカメラを改造した特殊なカメラで撮影する、途方もない写真です。同じ場所で何回転もしながら撮影するカメラでして、主人公たちは最終的に150mもの長さの写真を撮影することになります。実際にそんな写真があるのなら見てみたいですね。

 宏伸は気が弱く、人前で喋ることもリーダーとして人を引っ張ることも満足に出来ない。それどころか虐められ気味で、“ノロブー”という変なあだ名で呼ばれても文句のひとつも言えない。そんな彼がキッカケひとつで夢中になれるものを手に入れ、自分では気づかないうちに他者から認められ、キラキラ輝く存在になる。最終的に宏伸は実行委員長として撮影会を見事成功に導き、彼をバカにしていた生徒たちからも見直されました。

 しかし読み終えて気づくと、彼はグレート・マミヤ(スリットカメラ)を手に入れる(所有者から譲ってもらう)こともなければ、せっかく撮影した「世界一長い写真」もカメラ所有者のもとに留まったまま。実行委員として一緒に働き、ちょっとイイ感じだった学年のアイドル・安藤エリカとも、三好奈々恵ともくっつかず。でも宏伸にとっては、形はないけれども、この経験そのものが掛け替えのない貴重な青春の宝物であり、彼のその後の人生の肥やしだったというわけです。誉田哲也巧いなぁと思いましたね。

 それにしても…私にもこの宏伸のような宝物ってあったっけ…?ちょっと心配しましたが大丈夫。すぐに思い出しました。

 私は学生時代、自主製作映画を何本か監督した経験があります。特に最後に作った作品は仲間たちと一緒に時間をかけて、企画から脚本、キャスティング、ロケハン、撮影、編集、演出、劇場(?)公開まで一通りやり遂げました。自分たちも納得して送り出した作品だったので、観客の反応も上々。その後もしばらくはあちこちでリバイバル上映が求められ、私はその都度監督として参加、挨拶したものです。今となっては過去のちっぽけな栄光ですが(笑)私にとっての青春の宝物はコレ。宏伸の「世界一長い写真」と同じなんです。

 誉田哲也の青春ものってクオリティ高いです。


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