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ナミヤ雑貨店の奇蹟(ややネタバレあり)

2015-09-15 Tue 20:24
ナミヤ雑貨店


 昨年秋、友人から借りて初めて読んだのをきっかけに、それ以降もずっと読みまくっている東野圭吾(ミステリーファンを自称しながらこれまで一度も読んでいなかったというのも我ながら凄いと思います・笑)ですが、最近、彼の作品の中でもかなりの傑作ではないか?と思える一冊と出会いました。「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(角川書店)です。

 私の印象では、東野圭吾ものはどれも70~80点、安定した面白さ、という感じでした。しかしこの「ナミヤ 雑貨店の奇蹟」は明らかにそれ以上。まぁ嗜好品は好き嫌いありますので強くお勧めしませんが(笑) 

 物語は過去と現代、32年の時を経て繰り広げられる “SFハートウォーミングもの(?)”。湊かなえが得意そうな、一見それぞれ独立した短編のような物語を読み進めていくと、各登場人物や出来事の相関性が見えてきて最後に全てが一つに繋がる、みたいな構成ですね。時空を超えた文通、という決して珍しくないアイデアも様々な工夫により新鮮に見えました。

 さて、物語は…


第1章「回答は牛乳箱に」
 悪事を働いた翔太・敦也・幸平の3人が、一晩身を潜めるために逃げ込んだ無人の古い商店兼住居。そこはかつて週刊誌に掲載されたこともある、店主が悩み相談を請け負ってくれる地元では有名な雑貨店だった。
 
 しかし廃業したはずの荒れた店内で、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。送り主はオリンピック代表の座を勝ち取ろうと日々練習に励んできたものの、結婚を約束した恋人が末期癌に侵され悩んでいるという女性アスリート。オリンピックを諦めて彼を看病したいが、彼は彼自身の夢でもある自分のオリンピック出場を願っている。どうすべきか?という相談だった。3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くことに。彼らは書き終えた手紙を回収箱代わりの裏口の牛乳箱に入れるが、手紙は入れた途端消えてしまい、直後にまた新たな返事がシャッターの郵便口に届く。3人は何か不思議な現象が起きていること、手紙の内容から送り主がいる時代が1979年であることに気づく。となると送り主が出場を目指しているオリンピックは、日本がボイコットしたモスクワ大会。「彼の看病をせよ」とアドバイスするが、相手はなかなか煮え切らない。かといって自分たちが未来の人間だと明かすわけにもいかず…。

 元ネタなのかどうかは分かりませんが、悪戯みたいな相談にも真剣に答える様子が、10年ほど前に話題になった「生協の白石さん」みたいだと思いました。そこにSFや実際に起きた事件などの要素を加え面白く膨らませているわけですが、この第1章だけではまだまだこの小説の凄さは伝わりません。


第2章「夜明けにハーモニカを」
 あるクリスマスの日、児童養護施設の子供たちのためにギター1本でミニコンサートをしに来た克郎。子供たちは楽しんでくれたが、ある一人の少女だけが全く興味を示してくれない。しかし最後に披露した彼のオリジナル曲には強い興味を示し「こんなに上手いのならプロになればいいのに」と言ってくれた。
 
 かつて彼は両親に内緒で大学を中退した後、プロのミュージシャンになりたい一心で多くのオーディションを受けたがどれもダメ。それがきっかけで実家の両親とは疎遠になり、東京で当てもなく細々と暮らしていたが、祖母の葬儀に出席するため久々に実家へ帰る。克郎の実家は魚屋で、本来克郎が大学卒業後に継ぐはずだった。実家滞在中に父が自分に冷たい態度を取りながらも内心は応援してくれていることに気づく克郎だったが、父が病に倒れたことで迷いが生じる。ミユージシャンと魚屋、自分はどちらの道を選ぶべきか?彼は噂に聞いていた地元の雑貨屋・ナミヤ雑貨店に手紙を届けに向かう。

 克郎はどうするのだろう…?最後まで展開が読めませんでしたが、まさかのラストですよ。これは泣けましたね。


第3章「シビックで朝まで」
 浪矢貴之は、妻が先立って以来元気を亡くしていた父・雄治が見違えるほど生き生きしていることに驚く。原因は地元の子供相手に始めた“悩み相談”のようだ。父は悪戯やからかい目的の相談にも全身全霊を以て真剣に答えていた。
 
 しかし父が末期癌に侵されていることが分かり、貴之は父を引き取り家族とともに一緒に暮らす。そんなある日、父が一晩だけ実家の雑貨店に戻りたいと言い出す。そして将来自分の三十三回忌がきたら「ナミヤ雑貨店が一日限り復活するので、これまでの自分の回答が人生の役に立ったかどうか、相談者は知らせて欲しい」旨を告知して欲しいと息子に託す。帰宅した雄治のもとには時空を超えて未来から多くの礼状が舞い込んでいた。そして雄治は、白紙で届いた新たな悩み相談の手紙の送り主へ、人生最後の返事を書き始める。

 これもイイ話でしたね。ラストで判明しますが、最後の悩み相談に対する雄治の返事。あれは凄いです。泣けました。


第4章「黙祷はビートルズで」
 「ナミヤ雑貨店が一日限り復活する」ことをネットで知った和久浩介は、少年時代を過ごした町を訪れていた。

 彼は裕福な家庭に生まれ、従兄の影響で好きになったビートルズのレコードを聴きながら何不自由なく育った。しかし中3の夏、父親の会社が傾き、一家で夜逃げすることになってしまう。しかし父親を最後まで信頼出来なかった彼は、夜逃げ途中に立ち寄った高速道路のサービスエリアで反射的に別のトラックの荷台に潜り込み、親を捨てて一人東京に出てきてしまった。すぐに警察に補導されたが、夜逃げした両親を庇い名前も出身地も一切隠し通す浩介。やがて彼は児童養護施設で暮らすことになり、手先の器用さを買われ木工職人に弟子入り、慎ましくも幸せな人生を手に入れる。

 かつて彼は夜逃げすべきかどうか、ナミヤ雑貨店に相談したことがあった。返事には「両親を信じ支えるべき」とあったが、結果的にそうしなくてよかったと考える浩介は「結局自分の人生は自分の力で切り開くしかない」と書いた手紙を投函するつもりだったのだ。
 
 ビートルズ好きの女マスターが経営するバーで、店主と会話しながら手紙を書いていると、彼女が所有するレコードが夜逃げのため泣く泣く自分が手放したものであることを知る。そして彼女から衝撃の真実が語られる。

 これも泣けましたね。


第5章「空の上から祈りを」
 乗りかかった船とはいえ、店主になりすましていくつもの悩み相談に答えてしまった、翔太・敦也・幸平。これを最後にしようと決めた悩み相談は、「給料の少ないOLを辞めて夜のホステス一本に絞るべきか?」という、彼らにとってはどうしようもなく下らない悩みだった。しかし手紙の遣り取りを重ねるうちに、相談者が確固たる目的があってお金を貯めようとしていることを知り、水商売以外で成功する方法…バブル景気の到来と崩壊を教える。

 相談者の晴美はこのアドバイスを信じ一財産築く。そして数十年後、ナミヤ雑貨店の一日限定復活を知り、礼状を届けに故郷を訪れるが、運悪く3人組の強盗に襲われ、礼状の入ったハンドバッグを奪われてしまう。

 これも泣けましたね。特にラストは名シーンでした。3人が晴美の会社で働いている後日談を思わず想像してしまいました(笑) しかし未来を変えてしまうことに罪悪感を覚えて葛藤するこれまでのドラマや映画の主人公たちに比べ、バブル景気の到来を惜し気もなく教えてしまう3人って…(笑)


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