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《誹謗・中傷、暴露系ネタ、アラシ厳禁》
ユートピア(ややネタバレあり)

2015-12-09 Wed 19:35
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 湊かなえ最新作「ユートピア」(集英社)を読了しました。久々に初期の湊かなえらしい作風…序盤から張られまくりの伏線、ラストのどんでん返し、複雑で面倒な(女性間の)人間関係への皮肉、イヤミス…そんな要素が一通り散りばめられたミステリーでした。

 物語は、東京から遠く離れた鼻崎町という地方の港町が舞台。自然は多いが、他には八海水産という冷凍食品加工会社の工場があるくらいで特徴はない。それどころか、数年前ここで資産家殺害事件が発生し、負のイメージが全国に拡散されてしまった町である。

 ある時、町の活性化目的の祭りの実行委員を引き受けた、地元出身で老舗仏具店を営む主婦・菜々子は、八海水産の社宅に住む主婦・光稀、創作意欲の湧く環境を求めて移住してきた陶芸家・すみれと親しくなる。

 その祭りで起きたボヤ騒ぎに居合わせた、光稀の娘・彩也子は、交通事故により足が不自由な菜々子の娘・久美香を助け、友情の記念にとすみれの店で購入した羽型ストラップを贈る。彩也子の久美香への優しい気持ちを綴った作文が新聞に掲載・注目されたことも手伝い、三人はすみれ主導で羽型ストラップを利用した慈善活動を開始。瞬く間に話題となり、子供たちを巻き込んだ活動は大成功したかに思えた。

 しかし余所者の目立った活動をよしとしない地元民や、子供たちのクラスメートからは誹謗中傷の噂を広められ、三人は精神的に追いつめられてゆく。やがて彼女らの関係にもヒビが入り、ボランティア活動は終了。

 そんな折、下校途中の彩也子と久美香が、指名手配中の殺人犯・芝田に誘拐されて…。

 
 読んでいてまず思ったのは、この鼻崎町でかつて起きた殺人事件の犯人・芝田のモデルって、以前逃亡潜伏中に死亡した実在の殺人犯・小池だな、ということ…って誰でも気づきますよね?手配ポスターの「おまえ、芝田か?」というコピーは、明らかに「おい、小池!」を意識していそう(笑)

 その芝田、序盤から何度か話題に上るも、ストーリーとは直接関係なさそう。でも絶対コレ、伏線だよなと思っていたら、やはり…でもまさかあのような展開になるとは思いませんでした。

 そして小さな田舎町での人間関係の煩雑さ、付き合いの難しさをたっぷり疑似脳内体験させられましたね。結局のところ、どんな土地、どんな日常をユートピアとするかは、人それぞれ。都会者が憧れる絵に描いたような田舎暮らしを求めるすみれ、家族一緒の生活を求める光稀、明るく楽しそうな未来に漠然と期待する菜々子。仲がよさそうに見えてもそれぞれのユートピア観は異なる。

 私は田舎暮らしに憧れる都会者ですから、登場人物の中ではすみれに親近感を抱きました。しかし身近に光稀や菜々子のように、ちょっと離れた位置から冷めた目で見ている人もいるのでしょうね。

 どうせ数年以内に映画かドラマ化されるとは思いますが、ストーリーもビジュアルも映像作品向きな面白い作品でした。


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