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夢を売る男

2016-01-25 Mon 00:00
男夢を売る


 百田尚樹著「夢を売る男」(太田出版)を読了しました。小さな出版社を舞台に詐欺師もどきのやり手編集部長が、出版大不況といわれる業界のお寒い事情、小説家たちの勘違いぶり、自己主張大好きで自意識過剰な読者を、ブラックユーモアたっぷりに皮肉ります。出版業界に興味がないとちょっと退屈かも知れませんが、多少でも興味があればとても面白く読めると思います。

 舞台となる丸栄社では、牛河原という編集部長を筆頭に編集者が詐欺スレスレの手法で一般読者に自費出版話を持ちかけ、荒稼ぎしています。新人賞に応募してきた人に「惜しくも落選したが世に出すべき素晴らしい作品。弊社と貴方でコストを折半して出版しないか?」と持ちかける。もちろん作品の内容はクソなのですが、著者に負担させる分だけで十分利益が出るので、丸栄社はボロ儲け。業績は右肩上がりというわけです。

 私は出版業界のことは多少知っているつもりなので、実際にこんなことしてクソな本出したら出版社は信頼失くすでしょ?と疑問を持ちましたが、実際そこに嘘はなく、厳密には詐欺ではありません。それにこのビジネスモデルの意義について語られる牛河原の皮肉たっぷりの理屈には妙に納得させられてしまいます。

 そもそも、彼によると日本人は自己主張が大好き。自分にだけは才能があり、自分が書いた本をたくさんの人に読んで欲しいという強い願望を持つ者が多いそうです。そういう人に対して夢を売るのが自分の仕事、というのが牛河原の考え方。努力せずにジョブズのような大物になろうとするフリーターや、周囲のママ友を見下す主婦を口八丁でその気にさせ、次々にクソな内容の本を出版させて儲けます。たまに疑惑を抱いた顧客からクレームを受けても、言葉巧みに言い包め、良好な関係に戻してしまうという口の上手さ。

 また、売れないベテラン作家の凝り固まった古い思考、彼らのせいで出版社がどれだけ迷惑しているかについても徹底批判。本書文庫版の帯に「小説家志望の人は決して読まないで下さい」のようなコピーが印刷されていましたが、その意味が分かりました。今さら小説家志望とは言いませんが、自分の書いた本が世に出ることを何度か妄想した経験のある私もガッカリしてしまいましたから(笑)

 そんな反出版的思考の牛河原ですが、丸栄社以上に悪質な、詐欺同然の自費出版ビジネスを展開するライバル出版社が出現すると、会社を守るために戦います。その根底には嘘はだめ、顧客との信頼関係を壊してはならないという正義感と編集者魂が。散々出版業界のことを皮肉り、絶望視させておきながら、最後に(あぁ、やはり本っていいよな、出版って尊い仕事だよな)と感じさせてくれる、心温まる(?)物語でした。


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