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業者が赤字を被ってない?360°BOOKシリーズ

2016-02-22 Mon 20:36
 2月21日朝放送の「サキどり」(NHK)という番組で、最近の絵本事情が採り上げられました。「え!ほんと?スゴいぞ 絵本のチカラ」と題したこの放送回のテーマは、

「10分で子供を寝かしつけられると世界中で話題の本」
「町工場の技術が実現させた精巧な“しかけ絵本”」
「ビジネスマンがはまる“大人のための読み聞かせ”」

という3本柱。中でも私が色々な意味で気になったのが、「町工場の技術が実現させた精巧な“しかけ絵本”」です。


photo1
photo2


 この絵本、具体的には青幻舎という京都の出版社が発行した「360°BOOK」というシリーズ企画。ちなみに画像はAmazonから拝借した「白雪姫 SNOW WHITE」という、そのうちのひとつです。この他にも富士山をテーマにした「富士山 Mount FUJI」もあるようです。

 画像をご覧の通り、本といっても文字は一切なく、各ページ異なる精巧な絵柄を残して背景が切り抜かれただけのもの。これにより読者ひとりひとりが自分の物語を想像しながら、物語の世界に没頭する。そんな狙いもあるのでしょうね。本の構造上、ぐるっと360°円形に広げて眺めることも可能で楽しそうだし、アート作品としても素晴らしいと思いました。

 そもそもこのシリーズ、あるデザイナーさん(?)がPCとレーザーカッターを使って独自に細々と生産していたところ、これに目をつけた青幻舎の編集者がぜひ自社で出版させて欲しいとお願いし、出版を実現させたのだそうです。しかし大量生産するためには、レーザーカッターで1ページごと切り抜いていては時間もコストもかかり、本の単価もめちゃくちゃ高くなってしまう。そこで彼らは、地元京都の町工場…コンピュータの基盤の型抜きを請け負う会社に依頼し、金型を使って一度に型抜きするノウハウを構築。従来価格の半分のコストでの製作に成功した…というお話でした。ちょっと「下町ロケット」を思い出しますね。


【以下、私個人の勝手な想像および見解です】

 ところが、ボール紙を金型で抜くノウハウを持たないこの町工場の技術では、当初作家がデザインした通りの細かい絵柄を再現することが出来ず。約4ヶ月間テストを繰り返し、納得のゆくものを作れるようになったそうです。でも、そのテストにかかった費用は誰が持ったのでしょう?普通に考えたら出版社でしょうが、この青幻舎、主にアート関連の専門性の高い書籍を出版する、いわゆる普通の中規模経営の出版社のよう。そんなに気前がよいとは思えません。いや、青幻舎に限らず昨今の出版不況のご時世、(サイズや抜く形にもよりますが)1枚数万円から10万円以上するであろう金型何枚分も、業者の請求通りに「ホイっ!」と支払ってくれる出版社はほとんどないでしょう。もし、支払うとしたら間に印刷会社や製本会社を噛ませて、彼らマターにしてしまう感じでしょうか?「これが成功すれば御社のノウハウになるんですから」というわけです。

 でも、本当に印刷や製本会社にメリットはあるのでしょうか?

 Amazonで確認する限り、この本は1冊2,700円。本としては大変高価です。コスト云々を基についた価格のはずですが、同時に絵本としてつけられるギリギリ上限の価格とも取れます。この価格で出版・印刷・製本・加工各社とも本当に赤字になっていないのかなぁ…なんて部外者ながら心配になってしまいました。

 事実、NHKの放送では、夢のあるポジティブな部分にしか触れられず、コストどころかこの本の価格にも一切触れませんでした。発行部数は書籍(絵本)としては異例の20,000部と凄いですが、裏を返せばこれ以下のロットで新タイトルの出版が決まったり、小ロットで増刷がかかったりしたら確実に赤字になってしまう。ならばシリーズがずっと続いてたくさんのタイトルが出揃えば儲かるのか?いや、1冊2,700円の文字のない本を熱心に買い集める人ってどれだけいるのだろう?まぁ、価格も含めこの本の価値が分かる人が全国に20,000人以上いればよいのでしょうが。

 作品としては素晴らしいし、こういった新しいものを生み出そうという熱意にも敬意を払いたい。せめて製造に関わった会社の誰もが損をせず、この本の素晴らしさが世の中に浸透するといいですね。


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この記事のコメント
世界の市場
アートとは縁もゆかりもない製造業に従事する者ですが、仕事柄海外に頻繁に出かけます。この仕掛け絵本、たまたまアマゾンで知りましたが、海外の書店や美術館のショップで見かけることが増えてきたように思います。日本だと、そんなに大きな市場があるのかというのは同感ですが、海外まで含めると話は全く違ってくるように思います。製造業なので金型投資のリスクは重々承知していますが、第三弾が出たということは、印刷と抜き加工業者さんもペイしていると考えられます。そもそも印刷業界は今大変な状況(不況)に置かれているので、技術が活かせて新しい分野の仕事が持ち込まれるのは歓迎しておられるのでは?先日、海外の取引先への手土産にいくつか社費で購入して、実際に手にとって見てみましたが、中国でこの芸コマが出来るのだろうか?逆に言えば、マトモなコピー商品は出ないだろうなと思いました。ヨーロッパの客先でも大いに関心されました。
2017-02-20 Mon 17:43 | URL | World traveler #-[ 内容変更] | top↑
追記です
コメントの承認有難う御座いました。製造業でも印刷に近い分野も担当しております。その観点から追記致しますと、あの仕掛け絵本を作る技術の凄いところは「表裏の見当」と「抜きの精度」です。元はレーザーカッターで抜いていたとのことですが、その頃は紙(ページ)の表裏には印刷はされておらず単色の色紙だったのではと思います。興味を持ってネット検索してみたところ、黄色や緑色の色紙をレーザーカッターで切り抜いて、チーズや豆の木の絵本を作っておられたようです。ところが「富士山」「白雪姫」や最近出た「月と地球」は表裏にオフセット印刷がされています。これ、表と裏を別々に刷るので位置合わせが大変なのです。専門的には「表裏の見当を合わせる」と言いますが、数十ミクロン単位で合っているというのはかなりハイレベルな技術です。かつ、大して大きくないページを、あの精度で抜く…これは世界に誇ってもいいレベルの技術と思います。また、製造業の常識として、金型の所有権は製造委託側にあり、製造受託側にはありません。印刷と抜き加工をしている業者さんには金型の所有権は無いということは、その金型製作費用や試行錯誤による追加工費用は出版社が負っているのではと推測します。勿論、印刷の試行錯誤の失敗分(印刷業務では「ヤレ」と称します)や抜きのテスト分くらいは加工業者さんが負っているかもしれませんが、それはどんな請負仕事でも多かれ少なかれ発生するものですし、紙のロスは経営を揺るがす規模ではありません。多少、業界知識でいろいろ書いてしまいましたが、デザイナーの閃きと、高度な技術を持っていた印刷・加工業者と、この不況下でリスクをとってチャレンジした出版社…この快挙と思いたい事例です。価格は正直申して、個人の懐にはやや厳しい(私も社費購入で海外の手土産にしたくらい)ですが、関係者への利益配分やリスク分の上乗せをを考えるとそういう価格になってしまったのではないでしょうか?それでも、第三弾が出たということは、関係者がみなそれなりに納得する成果を得たのだろうと喜ばしく思います。個人的には、もう少し安くして、マスを狙って欲しいなと、製造業根性で思うところではあります(笑) 長々と失礼致しました
2017-02-21 Tue 01:55 | URL | World traveler #-[ 内容変更] | top↑
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