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《誹謗・中傷、暴露系ネタ、アラシ厳禁》
ポイズンドーター・ホーリーマザー(ややネタバレあり)

2016-07-01 Fri 00:00
ポイズンドーターホーリーマザー


 「第29回山本周五郎賞」を見事受賞したものの、次点が押切もえの作品だったため激怒したと話題の(笑)湊かなえ最新作「ポイズンドーター・ホーリーマザー」(光文社)を読了しました。イヤミス感が強く、読んでいてどの物語も悪役キャラに強い怒りを覚える作品でした(笑) 著者の他の作品同様これまでの人生、自分なりに真面目に常識的に生きてきたはずなのに、気づくとなぜか周囲から浮いており、可哀想な人を見る目で見られてしまうアラサー・アラフォー世代が主人公の短編集。同じ境遇にある読者が読むと共感するかも知れません。


「マイディアレスト」
 幼い頃から年の離れた妹への嫉妬心、自分だけに厳しく妹に甘い母親への不満を持つ姉が主人公。彼女はこれまでの人生、常に妹や母親に対する不満を持って生きてきた。母親に束縛され育った自分はアラフォーにもかかわらず独身・実家暮らし。男性経験もなくロマンス小説に憧れる。対照的に、自由に育てられた妹は都会へ出てデキ婚。実家での出産を控えていた。久々に里帰りした妹は姉を見下し、バカにするが…。

 奇抜なオチも大どんでん返しも無い、珍しくストレートな物語でしたが、私は好きです。読んでいて妹が憎くなります(笑)


「ベストフレンド」
 プロのシナリオライターを目指し、賞に応募し続けてきた主人公女性。ようやくある賞の優秀賞に選ばれたが、映像化が約束される最優秀賞に選ばれたのは明らかに自分より才能も人間性も劣る女性だった。嫉妬心を燃やす主人公は、自分の作品を好意的に評価してくれる関係者の協力のもと、地道にシナリオを書き持ち込み続ける。しかしライバルの書くつまらないはずのシナリオはなぜか評価され、いつの間にか彼女は売れっ子シナリオライターになってしまい…。

 本書中、唯一母娘の確執の無い物語。ラストに湊かなえらしい、ちょっとしたどんでん返しがありますが、テーマは運の無い女性の悲哀でしょうか?他とは毛色の異なる作品でした。


「罪深き女」
 スーパーで無差別殺傷事件を起こした青年を、幼い頃から知る女性が主人公。彼女と青年は小学生時代、同じ母子家庭という境遇のもと、数年間を同じアパートで過ごした。当時、男に溺れた母親に育児放棄されてひもじい思いをしていた彼に声をかけ、食事を与えるなど尽くしてきたが、そういった“余計な親切”は逆に真実を覆い隠してしまい、彼のためにならなかったのではないか?それが結果的に青年となった彼に凶悪事件を起こさせてしまったのではないか?と彼女は悩むが…。

 母親から干渉され自由が無く、それでも我慢してきた。そんな境遇にもかかわらず自分は不幸な隣人のために尽くしたのに…そんな健気な主人公ですが、実際には…?皮肉たっぷりで悲しい(笑)


「優しい人」
 幼い頃から他人と深く関わろうとせず、嫌なことも我慢して遣り過ごすのが普通だと思って生きてきた主人公女性。そのような振る舞いは結果的に周囲から評価され、親や教師からも誉められた。しかし一線を越えて相手の心に入り込むことがないため、心と心で繋がれる相手と巡り会うことはなかった。彼女は高校の同級生でもある、初めての彼氏からそれを指摘されようやく自分を理解するが、そんな時たまたま誘われたバーベキューで出会った先輩社員男性に、彼女の振る舞いを“好意”と勘違いされ付きまとわれる。先輩社員はストーカーと化し、彼氏に嫌がらせするようになったため、彼女は止めさせるために要求されるがままデートに付き合うが…。

 自分が我慢すれば全て丸く収まると信じてきた女性が、初めて愛する者のために…という理解でよいのかどうか分かりませんが、自分の考えと周囲の評価のギャップから生じる居心地の悪さみたいなものを感じます。それにしてもキモオタムカつく(笑)


「ポイズンドーター」
 幼い頃から母親から束縛され続け、やることなすこと逐一口出しされてきた主人公女性。彼女はそんな母親や母親が暮らす故郷を捨て、都会に出て運よく女優になることが出来た。地元の“親友”からは同窓会への誘いがあるが、母親を憎むあまり帰省しようとは思えない。そんな時、「毒親」をテーマに討論する番組に出演することになった彼女は、母親から受けた過去の仕打ちの数々を番組で暴露し、そのネタで本まで書いてしまった。その後母親は運悪く“交通事故”で亡くなってしまうが…。


「ホーリーマザー」
 「ポイズンドーター」の出来事以降、ネットや週刊誌で女優の母親は“実は交通事故ではなく、娘にテレビで毒親扱いされたショックで自殺した”や“実際の母親は聖母のようないい人だったのに、嘘をテレビで暴露した娘は酷い”といった声が出始める。仕事に支障を来すことを危惧した女優は、地元の“親友”に噂の出所を問い詰めに帰省する。そこで彼女が知ったいくつもの真実とは…。

 ひと言でいえば「親の心子知らず」または「子の心親知らず」がテーマなのかな?と思えますが、さらに独身女性には既婚者、しかも姑と同居して幼い我が子を育てる女性の気持ちなんか永遠に分からないし、自分がそうなって初めて母親、特に女手ひとつで娘を立派に育てようと必死に生きる母親の気持ちが理解出来るものなんだよ、的な厳しい批判が込められているわけです。読後はイヤミスらしい嫌な気分が残りますが、その陰には確実に感動も見え隠れする面白い物語でした。ぜひ映像作品化して欲しいですね。



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